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藤井 浩(准教授)(3ページ) 分子研リポート2011 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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研究領域の現状 255

藤 井   浩(准教授) (1998 年 3 月 1 日着任)

A -1).専門領域:生物無機化学,物理化学

A -2).研究課題:

a). 高原子価ヘム酵素反応中間体の機能発現の分子機構の研究 b).サレン錯体による混合原子価状態の電子構造の研究 c). 白血球の抗菌に関わる酵素反応中間体の研究

A -3).研究活動の概略と主な成果

a). 高原子価鉄オキソ錯体は,さまざまな酸化反応に関わる金属酵素の活性種であると考えられている。例えばオキソ 鉄4価ポルフィリン π カチオンラジカル錯体は,チトクローム P450 の活性反応中間体として知られ,さまざまな炭 化水素の水酸化反応を行う。オキソ鉄4価ポルフィリン π カチオンラジカル錯体は,不活性な炭化水素類を酸化で きるため高い酸化還元電位を持っていると考えられてきた。しかし錯体の不安定性からその電気化学的特性は明ら かになっていなかった。我々は,低温での電気化学測定を可能にするため,セルの開発を行った。その結果,さまざ まなオキソ鉄4価ポルフィリン π カチオンラジカル錯体の電気化学測定に成功した。実験の結果,オキソ鉄4価ポ ルフィリン π カチオンラジカル錯体は,予想外に酸化電位が低いことがわかった。また,酸化還元電位から酸化反 応の反応機構を詳細に解明することができた。

b).サレン錯体は,合成の容易さやその物性の多様性から光学材料,磁性材料,不斉酸化触媒など広く利用されている。 我々は,サレン錯体を用いて生体内の金属酵素や J acobsen 触媒と呼ばれる不斉エポキシ化触媒の反応活性種や反応 機構の研究を行ってきた。今回我々は,マンガン3価およびニッケル2価サレン錯体の一電子酸化生成物の研究を 行った。その結果,金属イオンは酸化を受けず,配位子のサレンのフェノール基が一電子酸化を受けたマンガン3 価およびニッケル2価サレンラジカル錯体を生成していることが見いだした。サレンは分子内に2つのフェノール基 を有しているので,そこから生成したサレンラジカル錯体は混合原子価状態となる。混合原子価状態に由来する吸 収を正しく帰属するため,非対称なサレン錯体を合成した。非対称サレン錯体を一電子酸化すると,先に記した対 称サレン錯体と同様にサレンラジカル錯体を生成した。対象なサレンラジカル錯体の分光学的データと比較すること により混合原子価由来のピークを正確に帰属することができた。

c). 生体内の白血球は,外部から細菌などが体内に侵入するすると細菌を取り囲み,白血球中のミエロペルオキシダーゼ という酵素が塩素イオンから次亜塩素酸を作り出し細菌を撃退している。ミエロペルオキシダーゼがどのようにして 次亜塩素酸を作り出しているかは未解明である。これまでの研究で,酵素が過酸化水素と反応して,高原子価オキ ソヘム錯体を形成することが知られていて,これが塩素イオンを酸化して次亜塩素酸を合成していると考えられてい る。我々は,高原子価オキソヘム錯体のモデルとなるオキソ鉄4価ポルフィリン π カチオンラジカル錯体を合成し, 塩素イオンとの反応を研究した。電子供与性の強いオキソ鉄4価ポルフィリン π カチオンラジカル錯体は塩素イオ ンを添加しても反応はまったく起こらないが,電子吸引性の強いオキソ鉄4価ポルフィリン π カチオンラジカル錯 体では塩素イオンと迅速に反応することを見いだした。反応生成物を解析した結果,オキソ鉄4価ポルフィリン錯体 を生成していることがわかった。さらに反応過程を速度論的手法により研究を行った結果,反応中間体として鉄3価 次亜塩素酸錯体を経由し,それがラジカル的に分解してオキソ鉄4価ポルフィリン錯体を生成していることを提案す ることができた。

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256 研究領域の現状 B -1). 学術論文

T. KURAHASHI and H. FUJII, “One-Electron Oxidation of Electronically-Diverse Manganese(III) and Nickel(II) Salen

Complexes: Transition from Localized to Delocalized Mixed-Valence Ligand Radicals,” J. Am. Chem. Soc. 133, 8307–8316 (2011).

A. TAKAHASHI, T. KURAHASHI and H. FUJII, “Redox Potentials of Oxoiron(IV) Porphyrin π-Cation Radical Complexes:

Participation of Electron Transfer Process in Oxygenation Reactions,” Inorg. Chem. 50, 6922–6928 (2011).

Z. CONG, T. KURAHASHI and H. FUJII, “Oxidation of Chloride Ion and Subsequent Chlorination of Organic Compounds by Oxoiron(IV) Porphyrin π-Cation Radical Complexes,” Angew. Chem., Int. Ed. 50, 9935–9939 (2011).

B -4). 招待講演

H. FUJII, “13C and 15N NMR Spectroscopy of Heme-Bound Cyanide (13C15N) in Ferric Heme Proteins,” 241st ACS National Meeting, Anaheim (U.S.A.), March 2011.

H. FUJII, “Functional Role of Unique Heme d1 in Nitrite Reduction by Heme-Containing Nitrite Reductase,” Japan-Korea Seminars on Biomolecular Sciences—Experiments and Simulations, Jeju (Korea), February–March 2011.

藤井 浩 ,.「金属酵素による酸素活性化機構と酵素機能の関わり」,.山形大学 ,.山形 ,.2011年 9月.

藤井 浩 ,.「金属酵素による酸素活性化機構と酵素機能の関わり」,. 山手イブニングセミナー ,. 岡崎統合バイオセインスセン ター ,.岡崎 ,.2011年 12月.

B -6). 受賞,表彰

高橋昭博 ,.日本化学会学生講演賞.(2007).

高橋昭博 ,.第41回酸化反応討論会ポスター賞.(2008). 王 春蘭 ,.第44回酸化反応討論会ポスター賞.(2011).

B -8). 大学での講義,客員

兵庫県立大学大学院生命理学研究科 ,.客員准教授 ,.2007年 2月–..

山形大学大学院理学専攻化学研究科 ,.集中講義「物質生命化学特別講義」,.2011年 9月 8日–9日.

B -10).競争的資金

科研費基盤研究 ( C ) ,.「合成ヘムとミオグロビン変異体による亜硝酸還元酵素モデルの構築と反応機構の研究」,. 藤井 浩. (2000 年 –2002 年 ).

科研費基盤研究 ( B ) ,.「単核非ヘム酵素反応中間体としての高酸化オキソ錯体の合成と反応性の研究」,. 藤井 浩. (2002 年 –2004年 ).

科研費基盤研究 (B),.「立体構造にもとづく基質結合サイトの再構築による酵素反応選択性の制御」,.藤井 浩.(2004年 –2007年 ). 大幸財団海外学術交流助成金 ,.「第3回ポルフィリンとフタロシアニンに関する国際会議での研究発表」,.藤井 浩.(2004年 ). 科研費特定領域研究「配位空間」(公募研究),.「金属酵素のナノ反応空間における基質の配向および反応選択性の制御」,. 藤 井 浩.(2005年 –2006年 ).

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研究領域の現状 257 科研費基盤研究 ( B ) ,.「高原子価オキソ金属錯体の反応性と反応選択性を制御する分子機構の解明」,. 藤井 浩. (2010 年 –2013年 ).

科研費基盤研究 (C ),.「高原子価マンガンオキソ錯体の精密反応制御」,.倉橋拓也.(2011年 –2015年 ).

C ). 研究活動の課題と展望

生体内の金属酵素の構造と機能の関わりを,酵素反応中間体の電子構造から研究している。金属酵素の機能をより深く理 解するためには,反応中間体の電子状態だけでなく,それを取り囲むタンパク質の反応場の機能を解明することも重要であ ると考える。これまでの基礎研究で取得した知見や手法をさらに発展させて,酵素,タンパクのつくる反応場の特質と反応 性の関係を解明していきたいと考える。また,これらの研究を通して得られた知見を基に,酵素機能変換法の新概念を確立 できるよう研究を進めたいと考える。

参照

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